言葉にならない おまけ
今年のケーキもまあ及第点かな。
にこにこしながらケーキを口に運ぶ貴方を見つめながら冷静に判断する。
コーヒーの変わりにアールグレイの風味付けをしたクリームをはさんでみたけれど、
まあ失敗ではなかったな、とほっとする。
そしてさっきから気になっていたことを先輩に尋ねた。
「先輩、そのリボンどうしたんですか?」
「あっ」
貴方は首に、手をやった。
ケーキにかけたリボン。何故貴方の首にかかっているんだろう。
「さっきお母さんにやられたの」
「先輩に似合ってます。その色は先輩に良く似合うから」
「えへへ」
貴方は気になるのか、リボンを外そうとする。
なんとなく勿体無くて。
貴方の手をつかんで、それを阻止する。
意地の張り合いになって。
力比べの状態になり、……貴方をクッションに押し倒す格好になった。
「もう!」
「……まだ、外さないで。似合ってますから」
「そう?」
「でも、なんとなくリボンがかかってると、プレゼントって感じ、しますよね」
「そうだね」
床に倒れた貴方は、今まさにプレゼントはわたし、状態だな
そう考えて、俺は赤面する。
「……譲くん、なんかやらしいこと考えてるでしょ?」
「……はい、まあ」
この状況で考えないのなんか、無理だ。
俺は別に聖人君子なんかじゃない。人並みに、そういうことだって考える。
俺は下がってもいない眼鏡のブリッジを押し上げ、貴方から必死で目をそらした。
貴方は文句をぶーぶー言いながら起き上がる。
乱れた髪を直そうとして、かき上げた時に、白いうなじが見えた。
そのうなじを俺の選んだリボンが飾っているんだな、
そう思うとたまらなかった。
「……プレゼントのリボンを外すのは、受け取った相手、ですよね」
「まあ、普通そうだね」
「じゃあ、俺が外していいですか?」
「ちょっと!」
貴方はあわてて身を竦める。
その動き自体が、なんだか俺を誘っているみたいだな。
そんなことを考えるあたり俺はおかしいんだろう、と
いやに冷静に俺は分析する。
するり、とリボンを解けば、貴方は観念したような顔で見上げた。
その顔は、反則です。
貴方の耳が赤いな。
薬指で軽く触れれば、貴方はびくっと跳ねた。
貴方は耳が弱いのか。
唇で耳たぶを軽くくわえれば、貴方は声にならない声をあげる。
……流石にいじめすぎたかな。
潤んだ目でじとっと睨まれ。俺は苦笑いして。
チュッ、とわざと音を立てて貴方の唇にキスをした。