貴方に福音がもたらされますように
May God always fill your heart with happiness
−7−
クリスマスは、雪になった。わたしにとっての二度目の初雪。
幸鷹くんのうちのベランダでふたりで並んで雪を見ていた。
結界を解いて京に降り始めた雪もこんな風に、幸鷹さんと一緒に眺めた。
あの時こんなに好きになるなんて、そしてもう二度と会えないなんて思いもしなかった。
ただ、嬉しそうな幸鷹さんが見れて幸せだった。
あの幸鷹さんの少し冷たい手は、今はもうない。
でも隣で空を見上げる幸鷹くんも同じあの日の京の空を思い出してくれている気がした。
今つながれた手の暖かさに心を締め付けられる。
その手を離さないでいよう、と思う。
この雪を貴方もどこかで見上げているような気がして涙が滲んだ。
小さな彼に心配をかけたくない。
でも、今は許して。
かつての彼がひとつでも幸せを感じられる瞬間がありますように。
もう一度こうして出会えるとしても。
わたしが傍にいなくても。
たった一人で生きた貴方にこそ福音がありますように。
そう願って結末が変わらなくても。
わたしの好きだった貴方の幸せを願わずにはいられない。
「いつか」
「なあに?」
「いつか僕が聴いたあの歌を今度花梨さんと一緒に聴きたいです」
「うん」
「いいんですか?確か国内じゃなかったと思うんですけど」
「いいよ。
いつか連れて行ってね」
それは幸鷹さんの思い出でもある。
時を隔ててしまっても、貴方がわたしに見せたいと思ってくれたのなら見てみたい。
幸鷹くんは嬉しそうに笑い、握る手に力をこめた。
「僕は頑張って、貴方を必ず幸せにします」
「違うよ」
「……どうしてですか?」
「二人で幸せになるんだよ」
幸鷹くんは耳まで真っ赤になって頷いた。
支度が出来たから食べよう!
下から香苗さんの声がした。
行きましょうか、幸鷹くんはわたしの手をひいて歩き出した。