「成程。こういうサービスもあるのだね」
「帯刀さん、カメラはあっちです」
ゆきくんは珍しくはしゃぐようにしてカメラの方向を指差した。
メッセージが流れ、シャッターの下りる音がする。
気恥ずかしくなりながらもそんな気分は悪いものでもなく、
おもむろに座席に腰を下ろした。
うまいことを考え付く人間もいるものだ。
二人連れが一緒に写真に納まるのはなかなか難しい。
そして道行く誰かに撮ってもらうのも気恥ずかしい。
なかなかに需要のあるうまいサービスだろう。
乗る前に見たけれど写真を収める台紙がもっと品が良ければ尚いいのに。
あれは持っているのが少し、気恥ずかしい。
かつて砂漠と化した世界で、風化したようになっていたこの遊園地も、
かつての賑わいを取り戻していた。
たくさんの思い出があるこの場所を君は大切に思っている。
今はいない二人の記憶でも思い出しているのだろうか。
こんなことを軽々しく口にするのは無責任かもしれない。
でもそれで君の心が少しでも軽くなるのなら。
そして、……目の前にいる私のことだけを考えてくれるのなら
私は何度でも口にしよう。
「二人もきっと何処かで元気にしているだろうね」
「そうでしょうか」
「……君を愛した龍神が、悪いようにする筈もないよ」
確信を込めて笑って見せれば、君は少しほっとしたような寂しげな顔をした。
今一緒にいる私のことだけを考えてれいればいいのに、君は本当に酷い子だね。
頂上まで上って、他に何の邪魔の入らない一瞬を迎えた時も、
君が他の誰かのことを考えていたなら。
私は甘いお仕置きをしよう。
君が、他の誰のことも……一切考えられないように。