貴方に驚いてもらいたいから朝早く起きて支度する。
貴方が起き出してくる前に全て終えてしまいたかったけど、
久々に喜びで驚く顔を見たくて張り切ったら思っていたより時間がかかってしまった。
ふらふらと寝ぼけながら貴方は起きて来て不思議そうな顔をする。
もう少しで朝ごはんができますからとそれとなく台盤所から追い出した。
なんとなく中身を秘密にしておきたい。
寝ぼけていた貴方は不貞腐れたような顔を一瞬したけれど、
楽しみにしてると部屋に戻っていった。
こんな時朝に弱い貴方で良かったと思ってしまう。
「隣の家に暮らしていた頃は、こんな苦労なかったんだけどな」
そういうと手伝ってくれた家の人がくすくすと笑った。
貴方が蓋を開けた時にどんな顔をしてくれるだろう。
それが楽しみで色んなものを貴方に作って渡した。
貴方はいつも喜んでくれて、その顔が俺を幸せにした。
ずっと同じ家にいるということは、貴方に秘密で何かを作って
喜ばせることが難しくなるということだ。
ずっと一緒にいたいと思うのに、こんな悩みを抱えることになるなんて。
なんて幸せな悩みなんだろう。
表情に喜びが出ていたのか、女の人たちはくすくすと笑った。
お重につめて、布できゅっと包んだお弁当はより特別な感じがする。
景時さんや朔とお花見に行こうと約束をした。
もうそろそろ着く頃だろうか。
「先輩?」
庭に咲いた桜を貴方は見つめていた。
山桜は白く色がない。
綺麗なのに見慣れたあの薄紅色の桜より少し寂しい感じがする。
「譲くん、出来た?」
「出来ましたよ」
「中身内緒なの?」
「自信作なので楽しみにしていて下さいね」
本当に?貴方はぱっと笑顔になった。
貴方の笑顔は鮮やかな花が咲いたみたいで、俺はいつでも見とれてしまう。
貴方はそんな俺を怪訝そうな顔で見上げると、鼻を指で小突いた。
「譲くん?」
「あの、えっと、何でもありません」
「本当に?」
貴方の笑顔が綺麗だったから。
まだそう口に出す勇気はないけれど、赤面した俺の表情から
貴方はなんとなく俺の気分を察したようだった。
「いいけど。
でも今日は楽しもうね」
「はい」
貴方は満足そうに笑うと俺の手をとった。