「兄さんが欲張るからいけないんだよ」
「うるっさいなー、譲。
そんなガミガミ言ってるとすぐにハゲるぜ」
「もう!いいかげんにしてよ」
素直に杏飴か姫りんご飴にしておけばよかったのに。
兄さんが欲張ってりんご飴にしたら、歯が立たなかった。
齧ってみて誰も食べられなかったからとりあえず家まで持って帰って来た。
花火を見て、出店で色んなものを食べた。
本当は特にそんなに美味しくないかもしれないのに、
あの独特の雰囲気の中で食べると美味しく感じてしまうから不思議だ。
きっと楽しいからだろう。
凄い人出であまり花火が良く見えなかったので、庭で花火をやろうということになった。
「やっぱコレだろう」
兄さんがニヤリと笑って取り出したのはロケット花火。
勿論ろくな使い方をしないんだろう。
水を入れたバケツをどんと置いてため息をついた途端に、やっぱり花火が飛んで来た。
「危ないな!」
「避ければいいんだろ」
「そういう問題じゃないだろ!」
貴方もいるのに、と振り返れば貴方はやる気満々でロケット花火に火をつけている。
「キャー」
笑いながら貴方は兄さんにロケット花火を向ければ、
甚平を着た兄さんは機敏にその花火を避けた。
ひまわりの柄の浴衣を着た貴方はとても可愛くて、
その浴衣に焦げ跡でもついたらきっと悲しむだろう。
そう思った矢先、兄さんが飛ばした花火が貴方に当たりそうになった。
袖を伸ばして庇えば、浴衣の袖に黒く跡が残った。
「ごめん、ゆずるくん」
「大丈夫ですか?」
「うん」
「……とりあえず、兄さん謝れよ」
「勝負だって言っただろ」
ニヤリと笑った兄さんに、黙ってねずみ花火を三連発でおみまいしてやれば、
兄さんは懲りたのか少し大人しくなった。
「……勝負って言うのならもっとわかりやすい勝負にしませんか?」
「おう」
「何するの?」
「線香花火です。これ以上にわかりやすい勝負はないでしょう?」
「よーし、一番早く落ちた奴はアイス奢りな」
結局どんな勝負でも二人は全力なんだから。
仕方ないな。
苦笑いして一本ずつ手渡す。
三人で一定の距離をとりロウソクを囲み、貴方のよーいの声で火をつけた。