「やっぱりそのひまわりの柄、似合いますね」
えへへと貴方は微笑んだ。
中学で一気に背の伸びた俺と兄さんとは違い、
それほど背の変わらなかった貴方は中学の頃から同じ柄の浴衣を着ている。
何着か新調したけれど、俺はその柄の浴衣が好きだった。
袖を焦がした俺の浴衣は身長が伸びたせいでもう着られなくなってしまったけれど、
ひまわり柄の浴衣を着た貴方を見ると夏だな、と思う。
あの時、守れてよかった。
その思い入れこそが、この浴衣が好きな理由なのかもしれない。
貴方は今年は受験勉強で忙しいけれど、気分転換になりますようにと
思い切って誘ってよかった。
わたあめを二人で頬張って、色違いの水風船を指にはめて。
貴方にせがまれて金魚もすくった。
オスかメスかもわからないけれど、紅い金魚が二匹涼しそうに泳いでいる。
貴方と歩く縁日は楽しい。
自分がどれだけ浮かれているのか気付いて不意に可笑しくなって笑えば、
貴方は不思議そうに覗き込んで、楽しいねと笑ってくれた。
どん、どどん。
スターマインはそれほど高くは上がらないから、人の波に切れてしまうけれど、
次々と上がるその光の華は道行く人の目を楽しませていた。
「来年は、譲くんが受験だけど。
また来ようね」
「……そう言って貰えると嬉しいです」
繋がれた手を離されて、不意に寂しさが過ぎったけれど、
貴方はするりと小指をからませ、約束だよ、と呟いた。