「えへへ、驚いた?」
自分でしておきながら、貴方の顔は真っ赤だ。
俺の部屋で、いつものように明日の予習をしている。
貴方の分の勉強もしているから、明日どころか来年の予習かもしれない。
いつものように、勉強の合間に紅茶を入れて、どうぞ、と座ったら貴方の唇がかすめて行った。
テーブルの反対側でえへへと悪戯っぽく笑う貴方。
追いかけようとして、一瞬テーブルの上の教科書と飲み物に躊躇するうち
貴方を捕まえるのに失敗する。
……貴方からしてくるなんて珍しい。
されて嬉しくない筈もない。
でも、貴方はいつも一瞬誘うような瞳をして、
その後そんな自分に照れたように、視線をそらす。
貴方に、キスをされて嬉しくないはずないのに。貴方は。
いつも誘うだけ誘って、そっぽを向いてしまう。
俺はそんなサインを見逃したくなくて、いつも貴方を見つめてしまう。
……本当に、仕方のない人だな。
貴方はきっと無意識で、いつものように特には何も考えていないんだろうけど。
そうやって、俺の目を釘付けにする名人だ。
貴方を見つめていたい。
貴方が何を見ているのか、その目線の先も俺は見ていたい。
けれど、貴方と俺の目線が重なるその時は、
貴方が俺を見てくれている、ということを実感できる、一瞬。
また、不意に目が合った。
「……いいですか?」
こく。
貴方は確かに頷いた。
貴方の手をつなぐ。
伝わるぬくもりに一瞬心を奪われていたら、再度貴方の唇が降ってきた。