「くあ〜、いい天気だなあ」

 兄さんは大きなあくびをする。
 確かに、いい天気だ。
 ぽかぽかとしてとても気持ちいい。
 普段教室で弁当を食べていたから、外で食べるのを新鮮に感じる。
 新入生だから。
 他の上級生がのびのびしている印象のある屋上に行き辛いというのもあった。
 三人で学校で昼ごはんなんて初じゃないんだろうか。
 今までずっと給食があって、それぞれの教室で食べていたのだから。
 二人はわきあいあいと場所を見つけて座り込む。
 ……二人は慣れているんだな。
 わかっていても考えても仕方ないと思ってもちくり、と棘が胸に刺さる。

「譲くん、こっち!」

 貴方はぴかぴかの笑顔で俺を招いた。
 ……俺は少し頭を振って嫌な気分を無理やり捨てると貴方のとなりに座った。

「こうやって三人で食べるのって、もしかして初めて?」
「そうなりますね」
「まあ学校以外じゃ珍しくもなんともないけど、
 こうやって面子が揃うとやっぱりいいな」
「だよね〜。
 早く譲くんも来ないかなって楽しみにしてたんだよ。
 じゃ、食べよう」

 弁当箱の蓋をいただきます、と開ければ、

「うわ〜、おいしそうっ」

 貴方は俺と兄さんの弁当を覗き込んで不思議そうな顔をする。

「あれ、中身いっしょ?」
「ああ、譲が作ってるからな」
「文句があるなら自分で作れよ」
「あるわけないだろ。
 サンキュ〜、譲」

 面と向かって礼を言われて、どうしていいのかわからず、
 下がってもいない眼鏡のブリッジを上げた俺を見て
 兄さんはニヤリと笑った。

「それで最近将臣君もお弁当なんだ。
 前は購買で何か買ってたり、おにぎりだったりしたもんね」
「それでいいじゃないか」
「ひとりぶんもふたりぶんも変わらないって言ってたのは譲だろ。
 購買のパンより譲の弁当がいいって。
 ああ、とりのから揚げうまい。」

 く〜、っとガッツポーズをした兄さんを先輩が羨ましそうに見つめた。

「ああ〜、いいなあ〜。
 将臣君ちょっとそれちょうだい!」
「じゃあ、お前のシュウマイと交換な」
「いいよ」

 馴れた様子でおかずを交換しあう二人に寂しさを覚えて目をそらす。

「……ほんとだ。
 これすっごくおいしい!!
 譲くん、これすごくおいしいよ!
 譲くんてば!!」

 ぼんやりとしていた俺を怪訝そうな顔で貴方が覗き込んだ。

「いや、何でもありません。
 おいしいですか」
「うん、すっごくおいしい!」
「じゃあ、もうひとつあげますよ。どうぞ」
「……いいの?」

 貴方は遠慮がちに俺を見つめる。
 兄さんの時には遠慮なんてしなかったのに。
 ……でもそんなことを気にしても仕方ない。
 俺は弁当箱をさしだした。

「どうぞ」
「ありがとう」

 貴方はにっこり笑って俺の弁当箱からとりのから揚げをひとつつまんで、
 ぱくりと一口で食べ、……笑顔になった。

「おいしい〜〜〜〜」

 その幸せそうな笑顔が見れればそれでいい。それ以上は望まない。
 そう思ったのに。
 お礼をしたいから、と貴方は少し考え込んで
 いちごを一粒俺の弁当の蓋にそっとのせた。

背景画像:空色地図

まちぶせ 有川兄弟+望美ver.