「どういうことですか」
譲は目で望美にすみません、と告げ、席を立つ。
コーヒーショップを出て、わき道に入り、通行人を避けて話しだした。
バイトの人数が足りないらしい。
出てくれないか、と社員は告げた。
今日は行けないとあんなにきちんと告げておいたのに。
「俺は今日は行けません。……でも、仕方ないですね。
鈴木さんと、三島さんは今日ヒマだって言ってましたが、かけてみましたか?
じゃあ、俺は三島さんにかけてみますから。鈴木さんはお願いします」
譲は数人のアルバイトの同僚に電話をかけ、打診をし、
ようやくひとりOKを貰い、職場に電話でそれを連絡した。
時計を見れば……10分。
10分も貴方を待たせてしまった。
でもこれでなんの気兼ねも無く貴方と過ごせるから。
携帯電話を胸ポケットにしまい、譲はコーヒーショップに再度入店した。
醒めてしまったコーヒーを口にする。
「先輩、待たせてしまって、すみません」
「譲くん、どうしたの?」
「いえ、バイト先の人が今日どうしても人が足りないから、と
連絡を入れて来たんです。でも俺は今日絶対無理だから。
入れそうな人に連絡をしたらひとりつかまって。なんとかなったみたいです」
「譲くんが探してあげたの?」
「俺には心当たりがありましたから。
バイト同士の方がいつ予定があるとか話しますからね」
「そっかー」
「だって俺は今日絶対行けませんから。
せめてそれくらいしたかったんです。
折角先輩と一緒にいられるのにあの後どうなったんだろうとか考えたくないですから」
「譲くんって律儀だよね」
「そうですか?」
貴方といられる時には、貴方のことだけを考えていたいんです。
それは流石に言えないな。
譲はこっそり苦笑いすると、望美にそろそろ出ましょうか、と告げた。