「で、何時から足りないんだ」
夕方5時からのバイトが足りないと店長は困惑して将臣に告げた。
将臣は残り時間を計算する。
移動時間を抜いて、あと三時間か。
将臣はちらりととなりの望美を見た後、一息に5時には行くと告げ電話を切った。
「悪いな、バイトはいっちまった」
「今日?」
「そう、今日の5時。遅番が足りないんだと。
世話になってるし、普段融通利かせてもらってるから断れなくてさ。
でもまだ三時間は余裕があるぜ。
移動時間抜いてもそうだからな、めいいっぱい遊ぼうぜ」
「もう!将臣くんは勝手だよ。
わたしに何もきかないんだから」
「まあお前とはいつでも会えるしな。
まだ三時間もあるんだぜ、何でもできるって。
時間が勿体無いからさっさと行くぞ」
「もう!」
さすがに望美に悪いと思ったのか、将臣は望美の好きな店、場所を回る。
三時間はあっという間だった。
最初デートの時間が短くなったことにむっとしていた望美だったけれど、
あっという間に笑顔が戻る。
「もう、時間だな」
「楽しかった!」
「そうか。お前といると楽しいから時間があっという間にたっちまうな。
いつもみたいに遅れないけど、帰れるよな」
「勿論」
「じゃあ、ここで」
「うん、将臣くんバイト頑張ってね」
「頑張って稼ぐさ。
……行こうな、沖縄」
「……うん」
照れて顔を背けた望美の頭をわしゃわしゃすれば、
望美は将臣の胸をどん!と小突いた。
「じゃあ。後でまたメールするよ」
「うん、じゃあ先に帰ってるね」
「おう」
将臣は手を振ると笑顔で改札の向こうに消えた。