この邸で見る桜は何度目になるだろうか。
 毎年少しずつ花が増えていくのを貴方と眺める。
 毎年一緒に見たいと言ったあの時の願いを貴方は叶えてくれた。

「幸鷹さん、今年はあっちに枝が伸びていたんですね」
「そうですね」
「初めて見たときよりずっと花が増えましたよね」
「それだけ貴方と一緒に時間を重ねてきた証ですね」

 傍らの花梨を見つめれば、嬉しそうな顔で一心に桜を見つめている。
 私が好きなその眼差しは優しいくせに強くて暖かい。
 少しふくよかになった頬を貴方は気にするけれど、
 私にはそれだって愛おしい。
 ずっと見つめていたのに気付いたのか、
 貴方は照れたように頬を染めて俯いた。

「来年の今頃は一緒に見上げる人数が増えているのですね」
「……楽しみです」

 膨らみが少しわかるようになったそこを撫でると、
 貴方は私の肩に身を委ねた。

背景画像:空に咲く花

増えてゆくのは喜びの花 幸花ver.