「寒い」

 貴方は火桶にかじり付くようにして震えている。
 ひらひらと舞い落ちる雪は、庭をまた白く染め抜いていった。
 葉の落ちた墨色の庭に降る雪はそれはそれで美しい。

「それなら、そんな端近にいなくとも良いではありませんか」
「でも折角雪が綺麗だから、それも見ていたいんです」

 貴方は下から覗き込むようにして私に訴えかけてくる。
 その顔は反則ですよ、花梨。

「それにその衣は私のものではありませんか?」
「そうですよ」
「何故?」
「幸鷹さんの衣の方が大きくて包まりやすいんです。
 それに何だか安心するし」

 照れたように少し俯くその顔も、愛らしい。
 けれど衣よりも、私の腕の中の方が暖かくは感じて下さらないのか。
 私は少しつまらなくなって、貴方を抱えるように抱きしめた。

「ちょっと!幸鷹さんってば」
「お嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいです」

 私はその答えに満足する。

「暖かい」

 抱きしめる力を込めすぎたのか貴方が身動ぎしたので、少し力を緩め寛げる余裕を作れば、
 安心したように私に背を預けた。

「これでもう少し眺めていられるでしょう?」
「はい」

 こうして身を寄せ合うことの暖かさを、しみじみ味わえるのも、
 この寒さがあってこそだ。
 こういう日もまた悪くないものだな。
 そんなことを考える自分自身に少し驚き、苦笑いした。

背景画像:空色地図

情味 幸花ver.