「眠れないのですか?」
貴方が手に持っているものは、ホットミルク。
何だか子ども扱いされているみたい。
たしかにまだ、幸鷹さんと比べたら子供だけれど。
でもその気になれば結婚だって出来る年なんだから。
そんなことを思いついた自分自身に照れて俯けば、
幸鷹さんは要りませんか?と首をかしげた。
折角いれてくれたんだから、貰わないのも失礼だ。
いただきます、とカップを受け取ればふわりとラムの香りがした。
「幸鷹さん、これ」
「眠れないのでしょう?
ほんの少しですがラムをたらしてみましたよ。
これで眠れるでしょう?」
暖かい牛乳は口に含むと何だかほっとした。
ラムの香りに、何処かへ行ってしまっていた眠気が戻ってきた気がする。
「美味しいです」
「それなら良かった」
「幸鷹さんって眠れないことってあります?」
「まあ……無いということはありません。
でも今晩は良く眠れそうですが」
「どうしてですか?」
「貴方がとても暖かいので。
貴方がいる日のベッドはとても心地いい暖かさで良く眠れます」
「そうなんですか?」
「貴方を抱き込んで寝てしまうから、苦しいのではないですか?」
「そんなことは、ないですけど」
「それなら、良かった」
幸鷹さんは嬉しそうに笑うので、わたしも嬉しくなった。
幸鷹さんはぴったりとわたしの背中にくっついて首筋に顔を埋めて眠る。
最初は驚いたけれど、じきに慣れた。
苦しいと思ったこともあったけれど、結局包まれる安心感のほうが勝って
今は一人で眠る日のほうが何だか寝付くまでに時間がかかる気がする。
さっきまで一緒に見ていた映画の内容がくるくると回っていた頭が、
ようやく眠れるくらいに落ち着いてきた。
一緒に眠っていたのにベッドを抜け出してしまったから幸鷹さんも目が覚めたんだろう。
「ごめんなさい。
先に眠っていても良かったのに」
「折角今日は貴方がいるのに独り寝なんて出来ません」
拗ねたようにそっぽを向いた幸鷹さんが何だか可愛く思えて。
じゃ、寝ましょうか。
そういってソファーから立ち上がると、幸鷹さんは嬉しそうに手を繋いだ。