「幸鷹さんって昔何して遊びました?」
「遊び、ですか」
「そうです」
「……兄と姉は大きかったので、あんまり遊んでもらった覚えはないですね。
 気がついたときには本を読んだり、数式を解くのが面白くなっていて
 あんまり遊んだ記憶はないんですけどね」

 花梨がうぇーという顔をしたので、
 幸鷹は苦笑いして頭をこつん、と小突いた。

「数式を解くのが私にとっての遊びだったんです」
「……わかってますけど、わかりたくない」
「わかりたくないですか」
「ええ」
「そうですか。まあ昔のことですから。
 花梨は何をして遊びました?」
「わたしは外で遊びましたよ。ゲームもしますけど、
 やっぱり外で大人数で遊ぶほうが好きでした。かくれんぼとか」
「かくれんぼ……本当に小さいころはそんな風にして遊んだかもしれません」
「あとはやっぱりおままごとですね!」
「おままごとですか」
「はい!」

 満面の笑みを浮かべた花梨をよくわからないという顔をして幸鷹は問う。

「何が面白いんですか?」
「女の子は好きなんですよ、ごっこ遊び!
 おうちっぽく囲い込んだり、おさらを持ってきて並べたり。
 時々本物のお皿とかいらないのを貰ってくると楽しいんです。
 並んでいるのがどろだんごとか、木の実だったりしますけど、
 でもそういうの準備したりするのが楽しいんですよ」
「……そういうものですか」
「そういうものなんです!」

 よくわからないなあという顔をした幸鷹を見て、
 花梨は提案をする。

「じゃあやりましょうか。これから」
「これから、ですか」
「はい。わたしが奥さんで、幸鷹さんは旦那さんでどうですか?」

 幸鷹は暫く思案して、

「じゃあ奥さま、膝枕して私の耳かきをしてください」
「ええ?」
「……うちの両親はよくそうやってるんです。
 どうやって頼もうかなと思っていましたが、おままごとなら仕方ないですよね」

 幸鷹は満面の笑みを零して戸惑う花梨に耳かき棒を渡した。

背景画像:ミントBlue

おままごと 幸花ver.