穏やかな日に






 パーティは楽しかった。
 皆が揃って。そして笑顔で。
 準備は大変だったけど、やっぱり出来てよかったな。
 起き上がって背筋を伸ばす。
 今日もすごく良い天気ですごく気分が良い。
 いいことがあるといいな、と思いながら身支度をしてドアを開けようとしたら
 隙間にカードが挟まっていた。
 何だろう。
 開けばとても綺麗な雪化粧の祝祭日のツリーのカードだった。
 繊細で、美しくてとても凝ったそのカードの贈り主は、ユージィン。
 今日は祝祭日だから贈ってくれたんだろう。
 一緒に行ったあの店で買ってくれたんだろうか。
 とても綺麗なカードだったから、それを大切にクローゼットにしまって、
 パーティの後片付けをしにラウンジへ向かう。
 今日会えたらカードのお礼を言いたいなと思いながら片付けをしていると、
 ユージィンが扉から顔を覗かせた。

「おはよう!ユージィン。
 カードありがとう。凄く綺麗だった」
「おはようございます。テレサ。
 喜んで頂けたのならそれで良いのですが、
 ……この後予定はありますか?」
「ううん。
 今日は祝祭日だもの。これを片付けたら後はもう何もないよ」
「……でしたら、少し付き合っていただきたいのです」
「ルノーも?」
「……いいえ」

 ばつが悪そうにユージィンが俯く。
 信じられない。
 ユージィンはわたしを誘ってくれているの?
 確かにこの前また出かけられたら良いって言っていたけど。

「了解。
 じゃあすぐに終らせて支度するね」
「……ありがとうございます。
 では馬車の手配をしてきますので」

 ユージィンは微笑むと扉を閉めて行ってしまった。
 ささっと片付けを終えた頃、行きましょうかと連れられて
 向かったのはかつて連れてきてくれた街。
 変わらない綺麗な町並みを進んでいくと、人の波は礼拝堂へむかっていた。
 ユージィンの話によれば、小さな街の教会だけあって、
 ミサもアットホームで温かな雰囲気なのだという。
 普段それほどちゃんと礼拝堂へ行かないわたしにも、
 司祭様のお話はわかりやすく、子供たちが歌う聖歌もかわいらしくて素敵だった。
 祝祭日気分を満喫できて何だか心の中が充実してくる。
 ミサが終って外に出てお茶でもと思ったけれど、どのカフェも勿論閉まっていた。
 広場に面する前に一緒にお茶を飲んだカフェも勿論開いていない。

「お茶でも、と思いましたが……困りましたね」

 ユージィンは困った顔でわたしを見た。
 この街に来るってわかっていたから、もう一度あそこでお茶を飲みたかった。
 少し期待していたけれど、ユージィンのそんな顔は見たくない。
 前に出かけた時みたいに笑っていて欲しい。

「……連れてきてくれてありがとう。
 今日は本当に素敵な一日だったよ」
「ですが……」
「祝祭日だもの、お店がお休みでも仕方ないよ。
 ユージィン、わたしの入れたお茶で良かったらそれでのんびりしない?」
「折角の祝祭日に貴方を働かせているようで気が引けます」
「わたしはお茶を入れてあげるの好きだから、気にしないで。
 皆が喜んでくれたり、ほっとしたりしているのを見ているのが好きだから」
「……私も、貴方が私の好みのお茶を覚えていてくださって嬉しいですよ」

 ユージィンは穏やかに微笑んでくれたので、わたしの中にじんわりと喜びが広がる。
 少し前までユージィンが怖かった。
 好みのお茶を覚える優先順位がユージィンが高かったのは
 あの少し神経質で皮肉で、そして冷静すぎる声音で嫌味を言われるのが怖かったせいもある。
 それなのにこうして並んで歩いているなんて不思議だ。
 ずっとルノーのことでいがみあっていたのに。
 なんで耳まで熱いのかな、と思ったらわたし自身が赤くなっているだけだった。

「いつまでもここにいるのも意味がありません。
 では帰るとしますか。
 ついたら、……貴方のお茶をいただきましょう」
「うん」

 自分でも嬉しそうな声がでたと分かった。
 恥ずかしいけどいい。本当に嬉しかったから。
 ユージィンは目を細めて優しげに笑うと、馬車に向かい歩き出し、
 わたしも踊るような軽い足取りでそれを追いかけた。