そんなに私の膝がお気に召したの?
帯刀さんは、手元の書簡から目を離さずに言う。
膝の温かさよりも、髪を撫でられているのが好きなのだと最近気付いた。
君は猫みたいだね、と帯刀さんは笑う。
どうしてですか?と尋ねれば、
君は一緒にいたいと思う時にしか私の傍にはよってこないし、
かまい過ぎても何処かへするりと行ってしまう。
それに君は一人でいる時間も好きなんでしょ。
君は君の時間に生きている。ほら猫みたいだ。
いけませんか?と尋ねると、
ずっとかまってあげられるわけでもないからありがたいかな。
と、帯刀さんはにっこりと笑った。
「でももう少し甘えたいと思ってくれてもかまわないよ。
それくらいの懐の深さはもっているつもりだし、
このくらいだと少し私が寂しいかな」
「寂しい、帯刀さんが?」
「そうだよ。
もう少し私を恋しいと思ってくれるくらいが丁度いいんだろうね」
「そうでしょうか?
でも帯刀さんとこうしているの、好きですよ?」
「何が君のお気に召したのかな。
こうして撫でる手が心地いいのかな」
「……わかるんですか?」
「君の事は、君よりもわかっていることもあるんだよ」
でも私の手は君の髪以外も愛でたいと思っているみたいだけどね。
帯刀さんは、書簡から目を外してわたしを見つめるとにっこりと笑った。