何故カップルという人種は観覧車に乗りたがるのか、ずっと不思議だった。
今ならなんとなくわかる気がする。
「見てみて、譲くん凄いね。高い!」
貴方が興奮してあちこち見渡すと、その勢いで僅かに揺れ、
高いところが少し苦手な俺は苦笑いした。
「あんまり揺らさないで下さい」
「もしかして、怖い?」
「怖くは無いですが、あんまり得意でも無いです」
「でも綺麗だよ?」
夕暮れ時の横浜にだんだんと灯が灯っていく。
帰る前に観覧車に乗ろうと言い出したのは貴方だ。
本当は夜景を見れたら良かったのに。
そうなると帰りが少し遅くなりすぎる。
夕日が沈んで空と海が赤く染まっていくのを見れたのだから
それで良かったと思おう。
もうすぐで頂上まで上がる。
何故カップルが観覧車に乗りたがるのか。
どうして頂点が待ち遠しいのか。
貴方はそんなことは考えもしない。
今は、わからなくてもいい。
もうすぐてっぺんだね!はしゃいで振り向いた貴方を引き寄せ、
そのまま軽く口付けた。