ルーズリーフと、パックの紅茶を買いに来て、
ふと目にとまったのはちいさなゆたんぽ。
そのゆたんぽは毛糸のカバーを着ていた。
そう、着ているというのが正しい。そういうたたずまいをしていた。
赤の毛糸に、白いポンポンがついたのと、グレーの毛糸に白いポンポンがついたの。
赤と白のボーダー、グレーと白のボーダーのものもあったけれど、
貴方はきっとこの赤に白いポンポンが方が好みだろう。
ゆたんぽは大、中、小とある。
どれだけ温まるのかはわからないが、……一応予算の関係もある。
一番ちいさなもののほうが貴方に似合う。
そう思って、手にとってレジに並ぶ。
「ご自宅用ですか?」
「いえ、ゆたんぽはラッピングお願いできますか?」
簡単に袋に入れてもらい、リボンシールを貼ってもらう。
使うのは自分ではないけれど、
それが手に入った袋を手渡されたとき何だかほわっと暖かくなった。
貴方の喜ぶ顔が見たくて、家路を急ぐ。
かたんかたん。
窓から見える景色はもう冬に近い。
急に寒くなって貴方は少し風邪っぽい。少しでも貴方の役に立ったらいい。
……一緒に甘いものでも買っておくべきだったかな。
いや、おととい焼いたパウンドケーキがまだあるから、大丈夫だ。
そんなことを考えながら電車を降りて家までの道のりを急いだ。
お茶を飲みませんか?とだけメッセージを送る。
さっき帰って来るときに窓から手を振ってくれたから俺の帰りを貴方は知っている。
メッセージが帰ってくる前に、玄関の戸が開いた音がした。
「譲くんおっかえり〜」
「先輩におみやげを買ったので」
「ええ!なになに?」
はい、と渡せば貴方は興味津々の顔で袋を開ける。
喜んでくれるだろうか。……緊張の、一瞬。
「かわいい〜、譲くんこれなぁに?」
「ゆたんぽです。先輩寒がりだから。
寝るときにでもつかってください」
貴方が喜んでくれてよかった。
俺は貴方の喜ぶ顔を見ていたいんです。いつでも。
ただそれだけだったのに。
後日貴方は俺にグレーの色違いのものを贈ってくれた。
お揃い、と鼻を赤くして。