小さな輝きに






 お前にしては気が利いていますね。
 この言葉がキーファーの口から発せられたとしたらそれは最大の賛辞だろう。
 人も物も見る目に長けていて、滅多に賞賛をしない彼のその一言は、
 わたしにとって励みになった。
 短い準備期間だったなりに頑張ったから良いパーティになったと思う。
 勿体無くて普段滅多につけられなかった贈り物で耳を飾ってみた。
 見事な職人の仕事だと見ればすぐにわかるそれは、
 繊細でそして華美でもなく、わたしに合わせて選んでくれたものだとわかった。
 恥ずかしがらずにすぐにつけていれば、それがわかったのに。
 キーファーが自分の為に、きっと少なくない時間を割いてくれたこと。
 それが嬉しかった。
 慣れないイヤリングをつけている感触と、ドレスを着ている緊張感が
 自然とわたしの姿勢を正す。
 彼ほどでなくても、今日はわたしも綺麗な姿勢でいられただろうか。
 キーファーの立ち姿のように優雅にはいかなくても、
 いつもよりは綺麗な姿勢でいたいと思った。
 いつも何気なくキーファーはできているけれど、
 それがどれほどの労力を必要とするか今日初めて知った。
 着慣れないドレスに、履き慣れないパンプス。
 どちらもこんなに疲れるものだったなんて。
 明日は祝祭日だから、ゆっくりできるから今日が終わるまでは頑張ろう。
 きっと明日は筋肉痛かな。
 ため息をつくと、キーファーがソファから立ち上がった。
 ルノーにユージィン。レヴィアス様、カインにショナと、
 夜がふけるにつれて部屋へ戻っていった人もいる。
 残っているのは朝まで飲み続けそうなカードに興じる四人組みと、
 キーファーだけだった。
 その彼もシャンパン、ワインと飲みつくし興が冷めたのだろうか。
 一緒にいられるのは嬉しいけれど、皆とのパーティでは
 なかなか話すきっかけが掴めないのがもどかしかった。
 このままふたりで話が出来ないまま今日が終わってしまうのはイヤだ。
 立ち上がったキーファーについて、ラウンジを出た。

「……フン」

 いつものように高慢な笑みを浮かべて、キーファーが振り返り、
 わたしの耳に触れた。

「そうやってつけていれば、地味なお前も少しは見れるようになるというのに」

 それは彼なりの褒め言葉だと今は知っている。
 似合っていると言ってくれていると思っていいのかな。

「ありがとう」
「……礼を言われるようなことは何一つ言っていませんよ」
「うん」
「けれど悪い気分ではなかったですよ。
 自分が贈ったもので身を飾る女が、他の男からの賞賛の視線で彩られている様は」

 キーファー薄く笑うと、もう一度わたしの耳元に触れた。

「これをつけているのは私の前でだけにするのですよ。
 ……いいですね」

 くすぐったさに目を瞑ると、キーファーは満足そうにわたしを見つめ、
 そしてすぐに踵を返した。
 優雅なくせに歩くのが早いキーファーの背中はあっという間に見えなくなった。
 呆然とそれを見送る中、耳元に違和感を感じた。
 もしかして。
 急いで部屋に戻って鏡を覗くと、銀細工の綺麗なピンがついていた。
 小粒のパールがわたしの赤毛によく映え、イヤリングともよく調和している。
 明日お礼を言えるかな。
 わたしは大切にその髪飾りとイヤリングを外し、引き出しにしまうと、
 幸せな気持ちで眠りについた。