22
「貴方とこうしてここに一緒にいられるとは思ってもみませんでした」
「そうですか?」
さくさくと降り積もった雪を踏みしめて、貴方ははしゃぐように駆ける。
そんな貴方が転ばないようにと声をかけることすら幸せだ。
小言ばかりの私の色気もない言葉にすら貴方は微笑んでくれる。
春に来て、夏になり。
色づく紅葉に、降り積もる雪。
こうして一緒に雪を眺めることなんてないと思っていた。
私の愛おしい人は、私の傍にいてくれることを選んでくれた。
共に来た友人やかつて生まれ育った世界を捨てて自分を選んでくれたことは
嬉しいことだし責任を感じることでもある。
貴方を幸せに。
それほどの出世を望むことも出来ない私は貴方に贅を尽くした生活は
約束はできないけれど、貴方はそれでいいと言ってくれた。
こうして二人でいれば暖かい。
そう言って貴方は手を繋いだ。
糺の森を進めば、連理の賢木が見えた。
二本の木が不思議に絡み合うこの姿に、私と神子殿の未来を願ったあの日。
貴方は賢木の前に立ち尽くした私を探してくれた。
貴方が来てくれた事を、中々口に出来なかった願いをきいてくれたことが
どれほど嬉しかったか。
こうして手を繋いで、再び連理の賢木の前に立てることをどれだけ幸せに感じているか、
目の前にいるこの愛しい人はどれだけわかっているのだろうか。
「どうして今日なのですか?」
鷹通さんに何かしてあげたいんですけど、何がいいですか?
そう尋ねられた私は、貴方と糺の森に行きたいと答えた。
じゃあ今日行きましょう。
そう言って連れ立って出かけたことに何の意味があるのだろう。
「この世界だと、毎年元旦に一緒に年を重ねるんですよね」
「そうです」
「でもわたしの世界だと、その人が生まれた日にお祝いをするんです。
今のわたしには鷹通さんにしてあげられることは少ないから、
今日は鷹通さんのしたいことをさせてあげたいなって」
「それで、今日」
「……鷹通さんの生まれた日は今日なんでしょ?
鷹通さんが生まれてきてくれてよかった。こうして一緒にいられて良かった。
……お誕生日、おめでとう。鷹通さん」
照れたように頬を染めて、貴方が私の存在を喜んでくれている。
わずかに震える手で貴方をそっと引き寄せようとする前に、
貴方は私の腕の中に納まった。
「ありがとうございます。
…………………………あかね」